警告その1! 危ない!優等生が引きこもり予備軍ナンバーワン?!……10年後、よい子のしわよせ、どどーんときます!
きょうのお話は、
「うちの子、ほんと手がかからなくてぇ~」
「反抗期もなくすくすく育ってくれてうれし!」
ってめでたく喜んでいらっしゃる方に聞いていただきたい4本仕立てのノンフィクションです。(では、本日は、part 1)
「息子がひょうへんして帰ってきた!!!」
「オレの青春を返せ!」
「オレがこうなってしまったのは、
すべておまえたちのせいだ!責任をとれ!」
こうたろう君(仮名)29歳。
時さかのぼること7年前。
東京都内の大学に入学すると同時に家を出て上京。
自由を獲得し、ワンルームマンションでひとり暮らしをエンジョイしながら大学生活を堪能するはずでした。
彼の両親もまた、
『これで息子が2人巣立った。ひとまず子育て期はクリア!』
と肩の荷を下ろし、社交ダンスなんぞを2人で習いに行こうかと思っていたところだったそうで。
◇
不穏な空気が流れ始めたのは、引っ越して2か月も経たないゴールデンウィーク明け。
大学をやめて実家に帰りたい、という電話がポツポツとこうたろう君から母親にかかってくるようになりました。
「帰りたい」とはいうものの、特に理由を語ることなく、さほど深刻なことがあったようには思えない……。(と母親は思っていました)
「ちょっとしたホームシックだろう」
「時が解決してくれるさ」
そんな父親の言葉もあって、母親は、都度、息子の声を聞き流し、その「時」を待っていました。
しかし、電話は減っていくどころか1週間に1度が2度になり、1日おきになり、毎日になり、まもなく1日に何度もかかってくるようになりました。
次第に電話に出るのがおっくうになってきた母親……。
『甘えてるんだわ。いちいち電話につきあってると、余計にひとり暮らしに専念できなくなるかも……」』
泣きグセのごとく甘えグセがついてはいけない、と自分を納得させ、
「お母さん、忙しいから電話は用事がある時だけにしてね。がんばるのよ」
と息子に言い聞かせ、1日おきぐらいにしか電話に出ないようにしよう、と決めました。
◇
その「時」は、思いもよらない形でやってきました。
6月初旬。
インターホンが鳴ったのでドアを開けたら……そこには山男が……いや、息子でした。
髪は寝ぐせで跳ね上がり、無精ひげで顔の半分が真っ黒け。
着ている上下スウェットは黒ずんだグレーからして、長い間洗濯されていないと思われる。
母、言葉が出ません……。
「もうムリだ……もうムリ……!」
「なんで電話に出ないんだ!」
地鳴りのように玄関で鳴り響くその音を、言葉に変換してわが身に言い聞かせようと復唱した途端、
『ぶほっ!!!』
母親の目の前で一瞬星が花咲き、そして真っ暗に…… 。
気がつけば、玄関床に頬寄せ息子の真っ黒な靴をながめているのでした。
「そして、引きこもり生活となって10年……」
親に罵倒を浴びせながら暴力を振るうようになったのは引きこもって間もなくのことでした。
先日も、母親のろっ骨を折り、父親の首を絞め、家の壁に大きな穴をあけたばかり。
最近では、アルコールの量が増え、
強迫神経症の症状が出た……というので精神科にかかっていますが、
とうとうその通院すら困難になるほど事態は深刻です。
こだわり行動が増え、お風呂に入れなくなりました。
大好きな読書は、決まった本(村上春樹の3冊)しか読めず、もはやボロボロ。
出かけられるのは、いつも決まったコンビニだけ。
そこで、夜更けにたばことお酒を買いに行くのが日課となりました。
彼は今日も、暴れながら親に恨みつらみを訴えます。
「オレはなぁ!? ずっとがまんしてきたんだ。
不器用だったから、……反抗すらこわくてできなかった。
ちくしょう!
その結果がこれだ。このザマだ!
もう限界だ!
あやまれ!
もう、狂って何をするかわからんぞ!
生き地獄だぁーーーー!」
「子どもの頃は、おとなしくて手がかからない子だったのに……」
「なぜこんなことになってしまったのでしょう?」
と、両親は過去を振り返り涙するばかり。
父親は警察官。
母親は元教師、現在専業主婦。
『何一つ不自由のない暮しをわが子に与えてきたはずだ。
この子を育てるのは大変だった、と思った記憶はない。
わが子が親を困らせたという記憶もない。
高校までは、ほとんど休まず学校に行っていたのに……』
何がいけなかったのか……
どうしてこんなことに……
◇
今日も、夕方5時に起きてきた息子……。
折れた肋骨が痛む母……。
息子の将来に絶望する父……。
今日も新たな修羅場が始まります。
(part2につづく)